茶の湯 数字ことば(和漢名数)

茶の湯 数字ことば」和漢名数で知る茶の湯の言葉として記載しております。

一の巻

一の宮
(いちのみや)

一の御子(みこ)。

一樂二萩三唐津
(いちらくにはぎさんからつ)

 茶人が和物茶碗の好みを順位づけた言葉。形、手ざわり、口当たり、重量感、釉景、肌合いなどの条件が満たされているものを順位づけたもの。高麗茶碗を入れた呼び名に、「一井戸二楽三唐津」がある。

一つ置
(ひとつおき)

長板、台子に風炉釜のみを飾ること。

三の巻

三阿弥
(さんあみ)

 足利将軍家に同朋衆として仕えた能阿弥、芸阿弥、相阿弥の三人。

三井戸
(さんいど)

 喜左衛門井戸、加賀井戸、細川井戸の大名物の高麗茶碗三碗をいう。また青井戸の、古今井戸、藤屋井戸、四もとの三碗をいうこともある。

三肩衝
(さんかたつき)

 松屋(松本)、投頭巾、楢柴(博多)の大名物の漢作唐物肩衝茶入。

三器
(さんき)

 茶入、茶杓、袋(仕覆)をいう。濃茶の点前の終わりに三器の拝見が正客から所望される。

三色紙
(さんしきし) 

 伝紀貫之筆の「寸松庵(すんしょうあん)色紙」。伝小野道風筆の「継(つぎ)色紙」、伝藤原行成筆の「升(ます)色紙」。

三千家
(さんせんけ)

 千利休直系の表千家、裏千家、武者小路千家の三家。

三宗匠
(さんそうしょう)

 三人の茶の湯の宗匠をいうが、組み合わせにはおおよそ次の四通りがある。①今井宗久、津田宗及、千利休 ②今井宗久、今井宗薫、千利休 ③千利休、古田織部、小堀遠州 ④古田織部、佐久間真勝(さねかつ)、小堀遠州。

三大会記
(さんだいかいき)

 「松屋会記」、「天王寺屋会記」、「宗湛(そうたん)日記」の三つの茶会記。「今井宗久茶湯日記書抜」を加えて四大会記ともいう。

三大手鑑
(さんだいてかがみ)

 「もしほ草」(京都国立博物館)、「見ぬ世の友」(出光美術館)、「翰墨城(かんぼくじょう)」(MOA美術館)の三つの手鑑。手鑑とは、代表的な古筆切をはり込んだ帖で、鑑定の基準とした。

三炭
(さんたん)

 茶事で客を迎えるときにととのえる、初炭、後炭、止炭、あるいは下火、初炭、後炭。

三筒茶碗
(さんつつちゃわん) 

 千利休が所持した、狂言袴(高麗)、挽木鞘(高麗)、ねの子餅(唐津)の三碗。

三伝家
(さんでんけ)

 村田珠光の茶を受け継いだ、千利休、古田織部、小堀遠州。

三柄杓
(さんびしゃく)

 点前をする過程で扱う、置柄杓、切柄杓、引柄杓。

三露
(さんろ)

 ①初水、中水、立水の露地の打ち水のこと。 ②掛け物の風帯の露、花の露、茶杓の露。 ③心の露、雨露の露、露地の露。 ①の場合は、三炭と合わせて、「三炭三露」といいならわしている。

茶入三品
(ちゃいれさんぴん)

 茄子、肩衝、文琳の三種をいう。また、丸壷を加えて茶入四品。

天下の三舟
(てんかのさんしゅう)

 淡路屋舟、針屋舟、松本舟の大名物砂張(さはり)三日月形釣舟花入。これに舟(ひらたぶね){*漢字が出ない、舟に帯と書く}、茜屋舟を加えて五舟。

羽箒三種
(はぼうきさんしゅ)

 右羽、左羽、双羽。

松屋三名物
(まつやさんめいぶつ)

 奈良の塗師松屋家に伝来した徐熙筆の白鷺の唐絵、漢作唐物茶入の松屋(松本)肩衝、存星(ぞんせい)の長盆の三種をいう。白鷺の唐絵と存星の長盆は伝存不明とされている。

樂只三種
(らくしさんしゅ)

 千宗旦から松尾宗二に贈られた、樂只軒の扁額(へんがく)、銘「樂只」の一重切花入、銘「樂只」の茶入の三種の茶道具。

利休三花入
(りきゅうさんはないれ)

 千利休が小田原の陣中で作った、一重切銘「園城寺(おんじょうじ)」、二重切銘「夜長」、逆竹寸切銘「尺八」で、いずれも大名物。

四の巻

四規七則
(しきしちそく)

 和・敬・清・寂の四カ条と、「茶は服のよきように点て」「炭は湯の沸くように置き」「花は野にあるように」「夏は涼しく冬暖かに」「刻限は早めに」「降らずとも傘の用意」「相客に心せよ」の七カ条で、千利休の茶の湯精神を要約した心得。

四家
(しけ)

 利休流上下四家元として、表千家、裏千家、武者小路千家、薮内家。

四滴茶入
(してきのちゃいれ)

 陶製の薄茶器で、水滴、油滴、手瓶(てがめ)、弦付(つるつき)の四つ。

四役石
(しやくいし)

 ①蹲踞の四役石は、前石、手燭石、湯桶石、鏡石。 ②中潜りの四役石は、客石、乗越え石、亭主石、踏捨て石。 ③雪隠の四役石は、乗石(二つ)、小用返し石、裏返し石。

宗旦四天王
(そうたんしてんのう)

 千宗旦の高弟で、藤村庸軒、山田宗偏、杉木普斎と、残る一人には松尾宗二、三宅亡羊、久須美疎安の名があげられたりする。

四大懐紙
(よんだいかいし)

 熊野懐紙、北山懐紙、聚楽懐紙、二条懐紙。

五の巻

五つ棚
(いつつたな)

 紹鴎棚、袋棚、四方棚、丸卓、小卓。

茶入五箇所の見所
(ちゃいれごかしょのみどころ)

 茶入の形の見所として、口、肩、胴、腰、底の五箇所の均整がとれたものをよしとする。

茶の湯五時
(ちゃのゆごじ)

 茶事を催す時間が異なる、朝茶、正午、菓子、夜咄、跡見の五種。

名物五つ茄子
(めいぶついつつなす)

 富士茄子、曙茄子、七夕茄子、利休小茄子、豊後茄子、いずれも名物、大名物の漢作唐物茄子茶入。

湯相の五段階
(ゆあいのごだんかい)

 湯加減を千利休が、蚯音(きゅうおん)、蟹眼、連珠、魚眼、松風の五つに分け、松風をよしとした。

炉の五行
(ろのごぎょう)

 炉中に備わる、木(炉縁)、火(灰)、土(炉壇)、金(釜)、水(釜の中の湯)。

六の巻

薄器六器
(うすきろっき)

 雪吹(ふぶき)、面中次、頭切(ずんぎり)、薬器、白粉解(おしろいとき)、茶桶(さつう)。

瀬戸六作
(せとろくさく)

 織田信長が選んだと伝える瀬戸の名工で、加藤宗右衛門(春水)、加藤長十、加藤市左衛門(春厚)、加藤茂右衛門(徳庵)、俊白(一説に宗伯)、新兵衛が知られている。

織部六作
(おりべろくさく)

 吉兵衛、江存(こうぞん)、宗伯、新兵衛、源十郎、茂右衛門の六人の陶工。

天下六瓢箪茶入
(てんかろくひょうたんちゃいれ)

 名物漢作唐物で、上杉瓢箪(大友瓢箪)、稲葉瓢箪、玉津島瓢箪{以上現存}、佐久間瓢箪、真珠庵瓢箪、茶屋瓢箪。

灰形六種
(はいがたろくしゅ)

 風炉の灰形で、二文字押切、二文字掻上、丸灰押切、丸灰掻上、遠山、向一文字前谷をいうが、流儀や風炉の種類によって差違がある。

与次郎六口
(よじろうさくろつくち)

 釜師辻与次郎作の名品で、松平讃岐守殿(所持の釜)、丸霰百会釜(まるあられひゃっかいのかま)、利休所持姥口、鐶付鬼面、惣霰、羽落。

六古窯
(ろっこよう)

 室町時代後期に開かれた窯場で、備前、丹波、信楽、瀬戸、常滑、越前。

六宗匠
(ろくそうしょう)

 村田珠光、鳥居引拙、武野紹鴎、千利休、古田織部、小堀遠州。

七の巻

薄器七種
(うすきななしゅ)

 尻張棗、大棗、中棗、小棗、つぼつぼ棗、碁笥(ごけ)棗。

遠州七窯
(えんしゅうなながま)

 小堀遠州好みの茶陶を製作したという窯で、志戸呂(遠江)、膳所(近江)、上野(豊前)、高取(筑前)、朝日(山城)、古曽部(摂津)、赤膚(大和)をいうが、古曽部と赤膚は遠州没後の開窯といわれている。

光悦七種
(こうえつしちしゅ)

 本阿弥光悦作の代表的な茶碗で、不二山、雪峰、障子、毘沙門堂、雪片、鉄壁、七里。一説には、加賀光悦、雨雲、時雨、鉄壁、有明、紙屋、喰違ともいう。また光悦十作は、黒光悦、加賀光悦、喰違、鉄壁、有明、障子、雪片、不二山、ヘゲメ、毘沙門堂。

御本七作
(ごほんしちさく)

 日本からの注文の御本を焼くために、朝鮮の釜山釜に派遣された七人の対馬藩士。七人とは、玄悦、茂三、小道二、小道三、弥平太、意春(太平)、徳本。また、彼らが焼いた作品。

七事式
(しちじしき)

 茶道の心技の練成を目ざして制定された式作法で、花月、且座、廻り花、一二三の式、員茶、茶カブキ、廻り炭の総称。

七種の建水
(しちしゅのけんすい)

 大脇差、差替、棒の先、鉄盥、鎗の鞘、瓢箪、餌ふご。

七種の天目
(しちしゅのてんもく)

 中国宋代の天目茶碗で、曜変、建盞、烏盞、油滴、灰被、黄盞、玳皮盞。

七種の棗
(しちしゅのなつめ)

 彭祖宗哲(三代中村宗哲)作の、秋野棗、夜桜棗、芽張柳棗、凡鳥棗、根来亀棗、菊大棗、高台寺棗。

七種の蓋置
(しちしゅのふたおき)

 一閑人、三つ人形、三つ葉、五徳、火舎、栄螺(さざえ)、蟹。それに対して、印、惻隠、糸枠、井筒、太鼓、輪、鈴を裏七種。

瀬戸の七茶入
(せとのななちゃいれ)

 中興名物の瀬戸茶入で、在中庵、釣舟、畠山、可中(わくらば){以上古瀬戸肩衝}、伊予簾(古瀬戸尻膨)、相坂丸壷(古瀬戸丸壷)、吸江(古瀬戸真中古窯面取手)。

茶事七式
(ちゃじしちしき)

 一定の形式を備えた茶事で、朝茶事、正午の茶事、夜咄の茶事、暁の茶事、飯後の茶事、跡見の茶事、不時の茶事。

長次郎七種
(ちょうじろうしちしゅ)

 樂長次郎作の茶碗から千利休が七種を選んだもの。検校(けんぎょう)・早船(はやふね)・木守(きまもり)・臨済{以上赤}、大黒・東陽坊・鉢開(はちひらき){以上黒}。

長次郎外七種
(ちょうじろうそとしちしゅ)

 雁取(がんとり)・閑居(かんきょ)・小黒(こぐろ){以上黒}、一文字・太郎坊・聖(ひじり)・横雲{以上赤}。

ノンコウ七種
(のんこうしちしゅ)

 楽家三代道入作の茶碗で、獅子・升・千鳥・稲妻{以上黒}、鳳林(ほうりん)・若山・鵺(ぬえ){以上赤}。

ノンコウ後窯七種     
 (のんこうのちがましちしゅ)

 長次郎茶碗の写しの検校、貧僧、大黒、小黒、鉢の子、早船、小雲雀。

利休七哲
(りきゅうしちてつ)

 千利休の高弟七人をさす呼称で、表千家四代江岑宗左は、蒲生氏郷、高山右近、細川三斎、芝山監物、瀬田掃部(かもん)、牧村兵部、古田織部をあげている。松屋久重著『茶道四祖伝書』は、瀬田掃部にかえて前田利長を、また他の茶書では、牧村兵部、古田織部を除いて、織田有楽、荒木村重、千道安などを加えている。

露地の七つ石
(ろじのななついし)

 露地に配置する役石で、手水石、前石、小口台の石(腰掛石)、踏段石、刀掛石(二段石)、待石(客石)、捨石。

八の巻

瀟湘八景
(しょうしょうはっけい)

 中国湖南省にある洞庭湖の南、瀟水、湘水付近の八つの景勝地。江天暮雪(こうてんぼせつ)、瀟湘夜雨(しょうしょうやう)、山市晴嵐(さんしせいらん)、遠浦帰帆(えんぽきはん)、煙寺晩鐘(えんじばんしょう)、平沙落雁(へいさらくがん)、漁村夕照(ぎょそんせきしょう)、洞庭秋月(どうていしゅうげつ)。

八炉
(はちろ)

 本勝手と逆勝手の、四畳半切、台目切、向切、隅炉の八とおり。田仲仙樵は、四畳半、一畳台目切、二畳向切、平三畳出炉、深三畳向切、長四畳、長四畳の古様、二畳台目切。

九の巻

九種の棗
(きゅうしゅのなつめ)

 大棗の、大、中、小、中棗の、大、中、小、小棗の大、中、小。

十の巻

十種香札
(じゅっしゅこうふだ)

 七事式に用いられ、順番や役割を決めたり、評定に使われる小さな札。もとは香道具。十個の小箱に、竹または黒檀製の札が十二枚ずつ入っている。表は箱ごとに十種の植物の絵(菊・桐・松・竹・梅・桜・柳・萩・水仙・牡丹)が描かれている。

千家十職
(せんけじゅっしょく)

 千家歴代家元の好み道具をつくる茶道具作家の家系で、楽焼の樂吉左衛門、釜師の大西清右衛門、塗師の中村宗哲、指物師の駒沢利斎、金物師の中川浄益、袋物師の土田友湖、表具師の奥村吉兵衛、一閑張塗師の飛来一閑、柄杓師の黒田正玄、土風炉師の永樂善五郎の各家。

茶の十徳
(ちゃのじっとく)

 茶を飲むことで身に備わる十種の徳のこと。明恵上人は、散鬱気、覚睡気、養生気、除病気、制礼、表敬、賞味、修身、雅心、行道といい、千利休は、諸天加護、睡眠遠離、孝養父母、消除重病、衆人愛敬、煩悩自在、無病息災、貴人相親、寿命長遠、悉除朦気と説いた。

伯庵十誓
(はくあんじゅっせい)

 伯庵茶碗の十の約束事。枇杷(びわ)色(全体に掛かる灰釉の色)、海鼠(なまこ)釉(胴の部分にある鉄釉の横線の色)、しみ(見込などに見られる。鉄釉による)、高台片薄(高台の幅が均一でない)、高台縮緬(ちりめん)絞り(高台内の土見が縮緬状になっている)、轆轤(ろくろ)目(水挽き轆轤跡)、切らず土(おからのような質感の土味)、茶溜まり(見込の底にある浅いくぼみ)、小貫入(全体にこまやかな貫入が入っている)、端反り形(口縁部が外に反り返っている)。

その他の数

習事十三ケ条
(ならいごとじゅうさんかじょう)

 表千家のおいて師匠の免許を必要とする習い事のうち、最初に習得する点前の技法で、軸飾り、壷飾り、茶入飾り、茶碗飾り、茶杓飾り、台飾り、茶筅飾り、組合点、仕組点、長緒、盆香合、花所望、炭所望。

小習十六ケ条
(こならいじゅうろっかじょう)

 裏千家において師匠の免許を必要とする習い物のうち、最初に習得する点前の技法で、貴人点、貴人清次、茶筅荘、茶碗荘、茶入荘、茶杓荘、長緒茶入、重茶碗、包帛紗、壷荘、炭所望、花所望、入子点、盆香合、軸荘、大津袋。

利休百首
(りきゅうひゃくしゅ)

 千利休の茶道教歌を百首集めたもの。百首の内容は、茶道の心得に始まり、点前、濃茶、薄茶、炭、釜、花などの扱いを詠んでいる。

※多数の書籍を参照しております。